2020年6月27日(土)14時から、福岡自治労会館(福岡市)において、2020年度第1回定例研究会を開催しました。本来は3月14日に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症対策のため止む無く延期していました。当日は過疎法指定の自治体職員や議員、市民など31人が参加。出席者にはマスク着用や3密対策に協力していただきました。
初めに、出水所長が、「コロナ感染が落ち着き、定例研究会を再開したが、今後地域で一層深刻な事態を迎えるかもしれないので、グローバルな視野で捉えなおす必要がある。本日の講演テーマは、ホットな課題で、関心の高いテーマである。」と挨拶しました。
次に、副所長の嶋田暁文さん(九州大学教授)が「ポスト過疎法の行方と関連法制の動向」と題して、講演しました。
まず、島根県匹見町の大谷武嘉元町長が過疎の実態と苦悩を訴えて立法化に奔走する様子を描いたビデオを一部上映し、いわゆる「過疎法」制定の時代背景に触れました。続いて添付資料論文の「全ての自治体が同様の権限と責任を持つ必然性はない」等の主張を批判し、本題に移りました。
「過疎地域対策緊急措置法」は時限立法として1970年に成立したものの、名称と内実を変化させながら50年間延長され、現行法は2021年3月末までとなっています。嶋田教授は、「過疎法」の概要や「過疎地域」指定の要件、法改正の内容と経過、「過疎債」の仕組みや現状等を説明。また、多額の財源を「過疎地域」に配分する現状に対する研究者の批判も紹介しました。
新たな「過疎法」が必要なのか、どこに重点を置いた対策を講じるべきなのか等の論点があがる中、2020年4月17日、ポスト「過疎法」のあり方について「過疎問題懇談会」が提言をまとめました。懇談会では「低密度居住地域」への転換が意識されたそうですが、結局「過疎」という用語は継続使用されることになりました。
「過疎法」は引き続き維持される見込みですが、人口減少・財政逼迫の中で今後も維持するか不透明であり、他の関連法を活用し、魅力的で持続可能な地域の構築が必要と嶋田教授は主張しています。関連法の中で、嶋田教授は「特定地域づくり事業推進法」に注目しています。同法は「事業協同組合」を地域で立ち上げ、協同組合で雇用した若者を地域の複数の事業に派遣し、通年で雇用と賃金の確保を目指すものです。しかし、継続的な派遣先や人材の確保、それを遣り繰りする協同組合の事務局体制の確立等の課題もあります。それらの課題を乗り越え、魅力的な地域づくりへの活用を期待する旨を言及し、講演を締めくくりました。
質疑応答では、副所長の畑中茂広さん(福岡県議)から、「過疎法」指定自治体や国における「ポスト過疎法」を見据えた動きについて、配布した資料を基に報告があり、過疎地域指定の要件について質問されました。嶋田副所長は、要件確認の時期によって違うので、一概に言えないと回答しました。
過疎指定の自治体職員からは、「国は人口減少する自治体をどれだけ延命するつもりか?」と人口減少への歯止めに苦慮する悩みを訴えました。嶋田副所長は「国は(自治体を)延命するつもりはない」としたうえで、地域をどうするのか、本気で職員が住民と議論・対話すべきと助言しました。

また、政令都市でも中心部から離れた「周辺地域」は過疎状況にあるが、過疎指定を受けていないので財源がないと、当該選挙区の議員からの発言がありました。嶋田副所長は、内閣府の補助金制度等もあるので、財源問題より、地域づくりの前提である人材育成やネットワークづくり等が重要になると示唆しました。


質疑の最終版に、出水所長から発言があり、現在、どの自治体も地域も質的な劇的変換時期に立っており、「周辺地域」から議員等の政治的代表者が政治決定の場に出ていないので、政治の場での決定に基づき、行政が動く政治代表制の回復と労組等による政治活動の回復が求められているとまとめ、定例研究会は終了しました。

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